取引先上司と車内からホテルで背徳不倫体験談

仕事が一段落した夜、取引先の担当者に食事へ誘われた。相手は当時32歳。私より7つ上の悠真さん。仕事では誰よりも冷静で、周囲を自然にまとめ上げる人だった。独身で、以前からたまに食事や飲みの席に呼ばれることはあったが、二人きりは初めてではなかった。車で送ってもらう機会も何度かあり、いつも特に何もなく終わっていた。私に恋人がいることを悠真さんも知っていたから、遅くなる前にきちんと家まで届けてくれていた。だから、その夜も少し油断していた。

路肩に車を停めて、自販機でお茶をおごってもらい、そのまま話をした。恋愛の話題になり、恋人の浮気で悩んでいることをつい口にしてしまった。相談に乗るふりをされながら、少しずつ雰囲気が変わっていくのがわかった。悠真さんに恋愛感情は持っていなかった。仕事で頼れる人として好意はあったが、それだけだった。ただ、恋人のことで落ち込み気味の時期で、「このまま口説かれたらどうなるのだろう」と、投げやりな気持ちが心のどこかにあった。

「美桜さんも、一度くらい仕返ししてみたら?」

シートベルトを外していた隙に、あっという間に抱き寄せられ、唇を重ねられた。振り向き方とタイミングが巧みで、強引でありながら無理やりという印象を与えないキスだった。女性の扱いに慣れているのだと感じた。「やめてください」と抵抗したが、迷いがあって拒みきれなかった。

「抵抗したいならしてもいい。でも、今夜は絶対に抱くから」

真顔で言われて、胸がときめいた。言葉は脅しめいていたが、抱き寄せる手は乱暴ではなく、触れる指先は意外なほど優しかった。逃がさない力加減を心得ているようで、ついばむような軽いキスを何度も繰り返され、私の唇も少しずつ開いていった。理性を保たなければと思い、「あたしまで裏切ったら、本当に壊れちゃう」と突き放そうとしたが、「彼を気にかけたままの美桜さんとしたい。そのほうが燃える」と返された。

あとで聞いた話では、恋人の話を出したときの私の反応を見て、「煽れば乱れる」と判断したらしい。ソフトなタッチを続けながら、わざと恋人を思い起こさせる言葉を投げかけてくる。背徳感が湧き上がり、踏みとどまらなければという気持ちが徐々に薄れていく。スキンシップに弱い自分を、改めて思い知らされた。

「スイッチ、どこ?」

ブラウスの上から胸の先端を探り当てられ、声を押し殺せなくなった。「敏感だね。声、出ちゃうタイプなんだ?」「感じ始めると目が潤む。すっげーそそる」「カレとするときもこうなの?」「ヤられたいって顔してるよ」

次々と投げかけられる言葉に、少し泣きそうになった。口では拒みながら、心のどこかで流されてもいいと思っている自分がいた。体目当てなのはわかっていた。それでも、意地悪を織り交ぜた愛撫が、自分の弱い部分に深く刺さってしまう。貞操観念が崩れたら、自分が流されやすい女だということに、そのとき初めて気づいた。

再び抱き寄せられてキスされた瞬間、私から悠真さんの首に腕を回して応じてしまった。体も心も、完全に溶けてしまった。はっきりと、この人に抱かれたいと思った。スカートの中に手が伸び、ストッキング越しに一番敏感なところまで触れられてしまう。手を頭の上で軽く抑えられ、なすがままに足を開いて受け入れている自分を、ただ見つめていた。

「見て。カレ以外の人に触られてるよ? こんなこと、許していいの?」

容赦なく指を使われ、腰が勝手に跳ねてしまう。絶頂の手前まで追い詰められ、ホテルへ行くことを承諾させられた。車中でも「意地悪されるの、好きでしょ?」「30分後には俺の上で腰を振ってるかも」と、囁くようにいじめられた。囁かれると弱い。悠真さんもそれを見抜いていた。「彼女じゃないから、手加減しないよ」という言葉が怖くて、同時にどきどきした。

部屋に向かうエレベーターの中でも抱きしめられ、私の体に熱いものが当たっているのがわかった。強く求められていることを意識せざるを得ず、「これからこの人とするんだ」と、いやでも覚悟してしまった。

部屋に着くと、悠真さんが先にシャワーを浴び、私は待つように言われた。帰るチャンスかもしれないと考えながら、携帯に恋人から連絡が来ないか待っていた。夜勤でメールなど来るはずがないとわかっていたのに、恋人が浮気したとき、どんな気持ちだったのだろうと考えていた。後ろめたさがあったのか、それとも単純に他の女性を求めただけなのか。腰を上げることはできず、時間だけが過ぎていく。結局、身を任せたい気持ちのほうが勝ってしまった。

シャワーから出てきた悠真さんに立ち上がるように言われ、抱きしめられてキスされた。フレンチキスから始まり、私の反応をうかがうように時間をかけて舌を絡めてくる。キスが上手い。自然に反応してしまい、長い時間唇を重ねていた。立っていられないほど力が抜けていく。

「車の中でいい匂いがして、我慢できなかった。どんなふうに乱れるか楽しみ」

「あたし、悠真さんを見る目が変わりそう」と、わずかに湧いた軽蔑の気持ちを正直に口にした。「お互い様だろ。もっと気の強い子だと思ってたけど。押しに弱いと知ってれば、もっと早く迫ったのに」「お尻、ちっさいよね」と撫でられ、軽く叩かれた。なんでもないふりをして、そういう目で見ていたのか。男の人はわからない、と思った。

シャワーを浴びさせてくれないので少し嫌がると、「フェチだから、どうしてもスーツ着たままの美桜さんとしたい」と言われ、そのままベッドに移された。「買ってあげるから」とストッキングを破られ、「こんなのいや」と言ったが、本当は乱暴されているような感覚に少し興奮していた。

「彼氏に悪いと思ったら、感じちゃダメだよ」

そう言われても我慢できなかった。恋人の顔は浮かぶのに、「ごめん」という気持ちは全く湧いてこない。休みなく体のあちこちを同時に触れられ、声を殺せずに身をよじるしかなかった。「弱いところだらけだね」と囁かれ、言葉でも責められるたびに淫らな気持ちが増していく。

ストッキングの破れ目から下着をずらされ、「ドロドロになってる」と言われた。空気に触れて、自分でも信じられないほど濡れているのがわかった。ライナーを使っていることもバレて剥がされ、恥ずかしかった。脚を少しでも閉じようとすると、力強い手でこじ開けられる。大事な部分を見られることも、弄ばれて濡らされることも悔しかったが、溢れるのを止められなかった。

「鏡を見て」

悠真さんの腕の中で翻弄される自分が映っていた。後ろから抱えられ、しなだれて体を預けている。たくし上げられたスカートの中で指が踊り、絶え間なく喘いでいる私をじっと観察しているのがわかった。ローブを着た悠真さんと、着乱れた私。対比がひどくいやらしくて、思わず見入ってしまった。

指先が私の顔を撫で、唇を割って指が侵入してくる。愛する人にするように、その指を吸い、舌で転がして甘く噛んだ。「本気になってきたね」と言われた。膝立ちになるように促され、向かい合いながらさらに深く唇を求め合った。「キス、好き?」「うん。チュー、弱い」仕事での関係はすっかり崩れ、いつの間にか甘えてしまっていた。

キスをしながら悠真さんがローブを脱ぎ、裸になった。逞しくて、正直、恋人より色濃い男を感じた。手を導かれ、熱く硬くなった部分に触れた。これで貫かれるんだ、と思った。互いの大事な部分を確認し合いながら、またキスを交わす。舌と舌を絡める音と、私の蜜の音が混じり合い、耳を刺激する。頭の中がぼーっとして、もっと欲しくなってくる。せつなくなり、私から首筋に唇をあてがってボディキスをした。もう止まらなくなっていた。

「思ってたより、ずっとやらしいんだね」

気がつくと、前に跪いている自分がいた。初対面の人との初めてでは口でしたことがなかったので、そう伝えた。「そんなの関係ない」と言われ、口元に突きつけられて拒めなかった。「いつもするようにして」と促され、観念して手と口で愛した。最初は目を閉じていたが、切なそうな吐息が気になってふと見上げると、じっと見つめていた。恥ずかしくて顔を背けると、「ダメ、してる顔みせて」と頬に押し当てられた。無理に押し込むことはせず、私が自分から唇を開くのを待っているようだった。仕方なくまた含み、「こっち見ながらして」と視線を向けられた。見下ろされている屈辱感が、次第に倒錯した感覚に変わっていく。「すっげーやらしい目してる。フェラするとメスになるんだ」もう頭の中がぐちゃぐちゃだった。

ソファーに連れて行かれ、腰をかけた状態で脚を広げられた。「入れるよ。覚悟できた?」返事はしなかったが、どうしようもない切なさに支配されていた。ゆっくりと浸入され、奥まで届く。反射的に「やだ」と口にした。「イヤなの? もう根元までいってるよ」言われた瞬間、背中がぞわっとした。いつもと違う感覚。彼ではない人に征服されている後ろめたさと、満たされる感覚でおかしくなりそうだった。

ゆっくりと、味わうように、焦らすように動き始める。ただ激しくされるより、ずっと好きだった。髪を両手で撫でられ、じっと見つめ返される。「キスして」と言わなくても仕草でわかってくれて、自分から唇を開いて待ってしまう。溺れる私を見て「感じてくれてうれしい」と言われた。私はいっぱいいっぱいなのに、どうしてそんなに余裕なのだろう。不思議で仕方なかった。

突然「今、誰のオンナなの?」と問い詰められた。答えずにいると、一突きされて泣かされた。「ほら、見て。俺が刺さってるよ」「やだ……エロすぎだよ……」「好きでもない男に楽しまれちゃってるね、ほら」繋がっている部分を見せ付けられ、じっくりとかき回される。やらしい音がして、下着をつけたままなのも卑猥だった。視覚でも音でも言葉でも、気が遠くなりそうなほど背徳感を煽られた。

「ほら、誰のオンナかちゃんと答えて」「い、いや」また急に深く打ち込まれる。私を翻弄したいときや答えを言わせたいところで、わざとピッチを上げてくる。「お願い。意地悪しないで」「彼女じゃないから手加減しないって言っただろ」「……今は、誰のオンナ?」「今は悠真さんに抱かれてる」と答えた。

「ベッドでしよ」と抱きかかえられ、それからさらに卑猥なことを言われたり、裏切りの言葉を口にさせられつつ、今まで経験したことのないほど密着度の高い行為に溶かされていった。上になったとき、「さっき言ったとおり、腰振ってる」と言われて恥ずかしくて死にそうだった。言葉でいじめるが、強い口調ではなく、囁くように意地悪してくるのでたまらない。いじめたあとに「頑張って言ってくれたね」とフォローされるから、気が緩んでしまう。行為も、追い詰めるときや悠真さんが達するとき以外は激しくなく、私に合わせて雰囲気を作ってくれているのがわかった。

繋がったまま話し、何度もキスし、無言で長い時間舌を絡め合い、また話す。不意に荒々しくされると、ねじ伏せられるような感覚でなおさら溺れてしまう。体験したことのない時間だった。寸前まで高まっているのがわかったのだろう。「後悔してる? しても遅いよ」急に真面目な顔でスパートをかけられ、罪の意識が一気に膨らんで、はじけてしまった。怖くなって「やだ」と身をよじると、強く押さえつけられた。快感に抗えず、恋人とは違う男の腕の中で、ついに果ててしまった。

耳元で「イッた?」と囁くのが聞こえた。答えなかったが、深く達したことで涙がこぼれてきた。悠真さんはまだ達していなかったが、「落ち着くまでシャワー浴びよう」と言われ、風呂場へ移った。胸を隠していると「イマドキの女子にしては恥ずかしがりだよね」と手をどかされた。シャワーで汗を流しながら、仕事のことなど普通の話をした。体を洗ってもらうときに「縦ベソだ」とおへそをつつかれた。落ち着きを取り戻したところで「おいで」と抱きかかえられ、再び繋がった。

愛する人とする一番好きな形だったので、複雑な気分だった。「さっき、イッたよね?」と聞かれ、ついに認めてしまった。「彼氏と比べて、どうなの?」「……」「答えて」「どうして彼のことばっかりいうんですか」「美桜さんが濡れるから」「やめて、おかしくなっちゃう」「おかしくなるくらいいいんだ?」「ヤバイくらい感じてる」と言ってしまった。

濡れた体が密着して、ぬるぬるが気持ちいい。「“悠真さん、いいよ”って言って」「悠真さん、いいよ」「彼氏より?」「……」「どうなの? 教えて」「……彼とするよりいいの。すごく感じる」「今日はゆっくりして大丈夫なんだよね?」数瞬ためらったが、結局頷いてしまった。

それから、恋人とのこと、男性経験、どうされるのが好きか、白状させられた。新しい相手に過去を聞かれることはあっても、現在進行形の恋人との営みを問い詰められるのは、恥ずかしさと後ろめたさが混じり合い、精神的に一番辛かった。特に、口で受け入れた経験があるか執拗に聞かれた。私が嫌がることはしないで、とお願いすると「“絶対イヤ”ってことを教えてくれたら、それはしない」と約束してくれた。

「もう出したい」と後ろ向きにされ、激しく揺さぶられて、悠真さんも昇り詰めた。またベッドに戻り、今度は私も自然に応えた。長い間無言で互いを味わい、やがて指と舌で追い立てられ、我慢できずに「欲しい」と口にしてしまった。「素直になったね」優しくキスされ、疼いた部分を深く埋めてもらった。またスローなペースで、会話と行為で確かめ合うのが心地よかった。

「髪、触ってばかりいる」「好きなんだよ。いい匂いするし」「髪フェチ?」「だね」「お尻とスーツもフェチ」「スーツってか、着てすると萌える」「コスプレ好きなんだ」「仕事のときのままの美桜さんがフェラしてて興奮した」「……あれは意地悪すぎ」「あのまま口の中に出したかったな」「ほんとは、あたしに飲んで欲しかったんでしょ」悪気はなかったが、悠真さんは少しムッとした様子で「今度、飲ませる」と言った。私は「いや。絶対」とかぶりを振った。

「今度」という言葉に、これで終わりにしないつもりなのだとわかった。心を見透かされたように感じて、意地悪モードになってきた。引き抜いては入れ、を何度も繰り返される。「入る瞬間、すごくいい顔する」じれったくて泣きそうになり、気がつくと「抜かないで。そのままして」とお願いしていた。「また俺の前でイキ顔晒したいの?」強烈な一言で、全身に怖気が走った。この言葉は絶対に忘れられない。動き出したら頭の中が真っ白になった。「今度はごまかせないよ」「調教されてる気分はどう?」「調教なんて、そんなこと」「誰が見たって調教中だろ」

体の相性というものは、確かにあったのかもしれない。自分の弱い部分はわかっていたが、こんなふうにいじめられると我を忘れてしまうのだと、はっきり気づいてしまった。この関係に溺れたら危ないと何度も脳裏をよぎりながら、快感に打ち消されていく。激しくしてこないじれったさに、はまってしまっている。

「いいの……当たる」「彼のより大きいから当たるんだよ」「……」「大きくないの?」「…大きいかも」「大きいの好き?」「わかんない、そんなの」「わからないのにいいんだ?」「あたしが彼女じゃないから、いじめるんでしょ」「彼女にしたら、もっといじめる」私からキスをした。キスしている間は意地悪を言われないから。たまに重く突かれて泣かされる。そんな繰り返しで、昇りつめたいのに焦らされて高まったままが続く。ついに理性の糸が切れて、「あたし、ダメになりそう」と伝えた。「イキたいの?」はっきり口にしたくはなかったが、「辛い」か「限界」か、そんなことを言った気がする。「じゃ、終わりにしようか。最後にイッていい?」「好きにして」と答えた。

四つんばいになるように言われた。さっき達したときも後ろからだったので、この体位が好きなのだとわかった。こんなに明るい場所で、初めてする人に無防備に後ろを差し出すのは、そのときでも抵抗があった。すべて晒してしまったと思ったら、顔から火が出そうだった。

「彼氏より大きいものでイカせて、って言って」「意地悪しないで。我慢できないの」「好きにしてって言ったろ」「やだ。絶対言わない」「強情だね。フトモモまでたれてるのに」「やだ、そんなところ触らないで」「言うまで止めないよ、ほら」「あたしが本気でイヤがることはしないって約束した」「言って楽になれよ」羞恥と屈辱でどうにかなりそうなところに追い討ちをかけられた。「言わないと、俺に狂わされたこと、みんなに話すよ」もう頭がおかしくなりかけて、今にも負けてしまいそうだったが、「これ以上されたら、悠真さんを恨む」と言ったら、やっとやめてくれた。

「ゴメン」と背中にキスされてから、再び入ってきた。最後はすごく激しく、手加減なしでされた。恋人のことなど頭から飛んでいた。腰をつかまれ、肩を押さえつけられ、髪まで引かれて、逃げたくても逃げられず、強引に達させられた。達したあとも続き、息ができないくらい苦しくて辛かった。こんな行為があるなんて思わなかった。乱れ泣いてぐしゃぐしゃになっていた。どのくらいの時間かわからないが、体感ではとても長かった。「もう無理。許して」とお願いしても、悠真さんが達するまで止めてくれなかった。

行為が終わったあと、しばらく放心状態で、「こんなの初めて」と漏らしたら、髪の毛をくしゃくしゃに撫でられた。それから二人でシャワーを浴びた。知られてしまった感じるポイントを撫でてこられ、「ダメ、もう終わり」と言っても、甘いキスに阻まれてしまう。こすりつけるように抱き合い、互いを感じ合うタッチ。終わったはずなのに、余韻を体に刻まれて疼かされてしまう。本当に危険な人と関係を持ってしまったと思った。

「またしようね」「……彼に悪いから」「俺のがいいって言ったクセに」「無理やり言わせたんじゃないですか」「俺にイカされた」「やめて」「彼氏じゃ届かないところに当たるって言った」「そんなこと言ってない」「もう許してって泣いた」「やめてってば」「美桜さんの正体、暴いてやった」何も言えなくなった私のそこを触って、「ほら、言葉で責めただけで濡れる」と言われた。Mだとか調教だとか言われて、本当にそうなのかとショックを受けた。浮気したことも後悔だったが、その認定も引きずってしまいそうだった。

悶々とした気持ちのままホテルを出る頃には、空が明け始めていた。長い時間そばにいたのだと改めて思った。帰りの車の中で私が無口だったので、「ちょっと無理しちゃったかな」と謝られた。可愛かった。またこうして会いたい、今の彼と別れたら自分と付き合って欲しいとも言われた。でも、嘘だろうと思った。雰囲気に流されて裏切るような女だとわかっていて、なのに彼女にしたいなんて。冷静になったら、疲れと罪悪感がひどく重くて、会話をする気力がなかった。

恋人の浮気で悩んでいた自分が、逆に流されるままに裏切って、快感に負けて溺れて。それどころか、裏切っている気持ちを媚薬にして感じてしまった。されたこと、言われたこと、言わされたこと、自分から求めてしまったこと。それが頭の中を巡って離れなかった。「気持ちの整理ができたら連絡しますから」とだけ言って、車を降りた。肌を重ねていた間も、帰りも、携帯に恋人からの連絡がなかったことだけが救いだった。

直後に、恋人とは別れた。向こうが浮気を認めて、「相手の子のことが好きになった」と言った。泣いた私を慰めてくれたが、悲しいから泣いただけではなく、正直ホッとしてしまった自分が情けなくて、また泣いた。私は結局、自分の裏切りを伝えられずじまいだった。友達は私が「捨てられた」と思い込み、友人間で少しごたごたがあり、それも気が重かった。普段は気が強いふりをして、肝心なところでジメジメしている。

耐えられず、自分から悠真さんに電話してしまった。別れたこと、裏切ったことを伝えられなかったこと、彼だけが悪いわけではないのに言い出せなかったこと。悠真さんのマンションで全部話した。「苦しめちゃったね」と言って、ハグしてくれた。たまらなくなって「一緒にいて」とお願いした。おもちゃにされてもいいと思った。でも、その日は静かに愛してくれた。それから一緒にいる時間が増えた。事情を少し知っている人には、恋人同士と思われていたが、私はそう思っていなかった。彼の女ではあった。でも、彼女ではなかった。

Mだと決めつけられ、酷いこともされた。怖かったのは、要求がエスカレートすること、それを受け入れてしまうこと、受け入れて当然のように振舞われることだった。環境に慣れたり感覚が麻痺すると、大事なものを失うような気がして、それは嫌だった。ずっと弱い部分があると自分でも思っていたが、本当にMなのかはわからない。っぽいというだけで、違うのではないかと思うこともある。他人に相談できないし、これだけは今でもわからない。普通以上M未満の、たぶんM。

スポーツのように行為はできないし、ペットでもない。ベッドで支配されたい欲求もあれば、灯りを消した部屋で普通に肌を合わせたい夜だってある。好きになったら抱かれたい。悠真さんとは順番が逆になったけれど、関係したら好きになってしまう。でも、彼は一人の女で満足できる人ではないし、私もこの人とは無理だと思うようになった。

半年後、悠真さんが異動になり、私も関係を清算するつもりで転職した。連絡が来ても無視して、しばらく会うこともなかったが、次に失恋したときに一度、マンションに行ってしまった。「自分から来たんだから」と、めちゃくちゃにされた。すごく後悔して、もう二度と会わないと誓った。それが最後だった。感情的にはとっくに卒業しているが、体が寂しいとき、ふと思い出して一人で慰めてしまうことはある。自分でもだらしない女になったと思う。

昔の男関係なんて、たいがい忘れてしまうけれど、これは無理だった。色んな意味で自分を知った夜だったから。忘れようとしても、忘れられない。

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