私は今、三十二歳。二人の子供を育てる主婦であり、かつては幼稚園で働いていました。夫は自営業で、家計も夫婦の関係も、表面的には何の問題もありませんでした。穏やかで、頼りになる夫。子供たちも元気で、日常は充実していたはずです。 なのに、私の中にはいつからか、静かにくすぶるものが生まれていました。 「このままでいいのだろうか」という、言葉にできない空虚感。それが、新しい職場で出会った一人の男性によって、一気に炎となって燃え上がったのです。
新しい職場と、彼との出会い 幼稚園を辞めた後、私は保育園に子供を預け、仕事を探し始めました。五社目の商事会社で面接を受けたとき、担当者の目が柔らかく、「来週から来られますか」と即答された瞬間、胸が軽くなりました。 入社して最初の二週間は、慣れない業務に追われる毎日でした。しかし一ヶ月が過ぎた頃、ほとんどの社員が外出してしまい、事務所には私と、一人の男性社員だけが残る日がありました。 彼は会社の中で最も成績を上げている人物で、端正な顔立ちと落ち着いた物腰が印象的でした。家庭があることも知っていました。私ももちろん、夫と子供がいる身です。だからこそ、「興味を持ってはいけない」と、何度も自分に言い聞かせていました。 それなのに、彼が静かに近づいてきて、こう言ったのです。 「仕事には慣れた? 入社祝いもまだだったね。今夜、終わってから少しだけ付き合ってくれないか」 私は、自分でも驚くほど素直に「はい」と答えました。
居酒屋から始まった夜 七時に仕事を終え、二人で近くの落ち着いた居酒屋に入りました。最初は仕事の話ばかりでしたが、杯が進むにつれ、会話は徐々に私的なものへと変わっていきました。彼の声は低く、優しく、私の心の奥をくすぐるような響きがありました。 二時間ほど経った頃、店を出た私たちは、夜の街を並んで歩いていました。彼の手が、自然に私の手を包み込みました。指の感触が熱く、鼓動が早くなるのを抑えきれませんでした。 「……嫌か?」 彼が小さく尋ねると、私はただ、静かに首を横に振りました。 目の前には、ホテルの看板が浮かんでいました。私は彼の目を見て、小さく微笑みました。その瞬間から、もう後戻りできない場所へ足を踏み入れてしまったのだと、はっきり自覚していました。
部屋の中で 部屋に入り、ベッドの端に並んで座った私たちは、しばらく言葉を交わしていました。しかし、彼の手がゆっくりと私の肩に回り、そのまま首筋へ。熱を帯びた唇が、優しく、しかし執拗に私の肌に触れました。 丁寧で、ねっとりとしたキス。舌がゆっくりと絡み合い、呼吸が乱れていく。私は初めて、夫以外の男性の熱を肌で感じながら、強い緊張と、それ以上に強い昂ぶりを同時に味わっていました。 服を一枚ずつ脱がされていくたび、肌が空気に触れる感触が鋭くなりました。彼は私の全身を、まるで何かを確かめるように丁寧に撫で、唇でなぞりました。首筋から鎖骨へ、胸の膨らみを丁寧に味わい、脇の下や太もも、足の指まで、一切の油断なく愛撫を続けました。 「……気持ちいい」 思わず漏れた声に、彼は低く笑いました。 私はこれまで、夫にさえ口で奉仕したことがほとんどありませんでした。一度だけ試みたものの、どうしても抵抗があり、途中でやめてしまった記憶があります。けれど彼のものは、不思議と抵抗なく受け入れられました。熱く硬い感触を口の中で感じながら、私は初めて「これが、こんなに興奮するものだったのか」と、心底思いました。 電気を消さずに、互いの姿をはっきりと見ながら求め合いました。彼の舌が私の最も敏感な部分を執拗に刺激するたび、腰が跳ね上がり、息が詰まりました。夫とはまったく違うリズムと強さで、波のような快感が何度も押し寄せてきます。 「入ってもいいか」 彼が低く尋ねると、私はすでに理性を失いかけていました。 「……いい。入れて」 ゆっくりと、しかし確実に体内へ受け入れた瞬間、私は小さく喘ぎました。夫よりもわずかに控えめなサイズでしたが、それがかえって奥までしっかり届き、敏感な部分を的確に擦り上げてくる。正常位で深く結合したまま、彼は徐々に動きを速めていきました。 後ろから抱えられるように体位を変えられ、腰を激しく打ち付けられるたび、私の中で何かが弾けそうになりました。 「このまま、中に出してもいいか」 「……いい。出して」 彼の動きが一段と激しくなり、最後に強く突き上げられた瞬間、熱いものが奥深くに注がれました。ビクンと体を震わせる彼の感触を、私はすべて受け入れました。 「……中に出してしまった」 「気にしないで。大丈夫」 そう答えながらも、私の胸の奥では、小さな不安が静かに広がっていました。
その後の関係と、予期せぬ結果 あの夜を境に、私たちは頻繁に会うようになりました。月に一度あるかないかの夫との営みとは対照的に、彼とは月に何度も、オフィスの近くのホテルや、時には彼の車の中でさえ、激しく求め合いました。 彼の愛撫はいつも丁寧で、しかし一度火がつくと容赦なく深く、長く続きました。私は自分がこんなにも敏感で、こんなにも貪欲な女だったのかと、毎回新しい発見をしていました。夫には見せたことのない表情を、彼の前では自然と晒してしまう。内面に隠していた欲求が、彼によって次々と引き出されていく感覚に、私は次第に依存していきました。 そして、ある朝。 いつものように生理が来るはずの日が過ぎ、検査薬を使った結果、はっきりと反応が出ました。 「産んでいい?」 私は彼に尋ねました。彼は少し困ったように笑いながら、 「もちろん。でも、ご主人には……ばれるだろう」 と返してきました。 「大丈夫。月に一度は夫ともしているから。誰の子かなんて、わからないわ」 そう言いながら、私は自分の腹に手を当てました。 月に一度の夫との行為と、月に十回近くを重ねた彼との行為。確率からすれば、ほぼ間違いなく彼の子です。 それでも、私は産むと決めました。 生まれてくる子が、誰の顔に似ているのか。それを想像するだけで、不安と、奇妙な期待が同時に胸を締めつけます。 今も私は、夫の隣で眠りながら、彼の熱を思い出しています。 あの夜に始まった火は、まだ静かに、私の中で燃え続けているのです。

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