二交代の夜勤明け、重い体を引きずりながらマンションの駐車場を通り過ぎた瞬間、妻の姿が目に入った。
不動産会社の若い社長と、車のドアに寄りかかりながら親しげに話している。
笑みを浮かべ、時折髪を耳にかける仕草が、日常の妻とは明らかに違っていた。
私はすぐに車を止めず、そのまま通り過ぎた。
胸の奥が冷たく沈む。
工場の管理職として十二時間勤務を重ね、時には十五時間を超える日々を送りながら、家庭を守ろうとしていた自分が、ひどく愚かしく思えた。
その夜、妻が深く眠った隙に携帯を手に取った。
暗証番号はすぐに解けた。
仕事の連絡を装ったメッセージの端々に、甘ったるい語尾と、夜の約束を匂わせる言葉が散らばっていた。
翌日、昼の間に家を捜索した。
引き出しの奥から出てきたのは、見たこともない派手な下着の数々。
レースの紐ばかりのものと、薄い布切れのようなもの。
さらに化粧品に紛れて、二枚のディスクを見つけた。
再生した瞬間、リビングのソファに座った妻が、社長の前に跪いている映像が始まった。
スーツの襟元を大きく開け、胸を晒したまま、熱心に奉仕している。
次のディスクでは、応接室らしき場所で、さらに長く、執拗に続けられていた。
最後は口の中に受け止め、丁寧に唇で拭い取る仕草まで映っていた。
私は映像を止めた。
怒りよりも、静かな決意が先に湧いた。
興信所を使い、ホテルに入る写真を確実に押さえた。
弁護士にも相談し、証拠は十分だと判断した。
一ヶ月ほど泳がせた後、静かに問い詰めた。
「浮気しているだろう」
妻は最初、真っ向から否定した。
ホテルの写真を突きつけると、言葉を失った。
「出ていってくれ」
荷物をまとめさせ、家から出した。
その後、三人で向き合った席で、社長は「誘われただけだ」と主張した。
妻も「無理やりだった」と口を揃えた。
私は冷静に、映像の内容を指摘した。
どちらが積極的だったかは、一目で分かる。
弁護士が同席していたこともあり、最終的に社長は認め、示談を希望した。
「奥さんには言わないでほしい」
社長は土下座までした。
私は黙って電話をかけた。
十分後、社長の妻が現れた。
端正な顔立ちに、控えめで品のある雰囲気。
話を聞いてすぐに状況を理解し、静かに謝罪した。
示談の条件を詰める過程で、私は社長に内緒で彼女と番号を交換した。
後日、改めて連絡を取った。
「データの処分を、私自身が納得できる形で確認したい」
彼女は何度も「責任を持って」と繰り返した。
しかし具体的な保証はなく、話は平行線を辿った。
「示談を白紙に戻し、訴訟に切り替える」
そう告げると、彼女の声がわずかに震えた。
「内密に済ませたい。どうか、ご納得いただける形で」
私は静かに言った。
「金銭だけでは、覚悟が伝わらない」
長い沈黙の後、彼女は小さく頷いた。
「一度だけ、でよろしいのでしょうか」
約束を何度も確認し、日時を決めた。
指定したホテルの部屋で、私は先にシャワーを浴びた。
彼女が入ってくると、バスローブの襟元を固く握りしめ、震える指で帯を解いた。
「キスだけは、ご容赦ください」
低い声でそう告げ、静かに服を脱いだ。
華奢な体が露わになる。
胸は控えめだが、肌の色は白く、首筋から鎖骨にかけて美しい線を描いていた。
私は彼女をベッドに座らせ、ゆっくりと唇を胸に寄せた。
舌で尖った先端を捉えると、彼女の体が小さく跳ねた。
「……んっ」
抑えきれない吐息が漏れる。
彼女は目を閉じたまま、私の下半身に顔を近づけた。
熱い吐息を浴びせながら、丁寧に舌を這わせ、ゆっくりと咥え込む。
歯を立てず、奥まで含んでは引き、また深く沈める。
私は彼女の細い肩を押さえ、腰をわずかに動かした。
熱いものが喉の奥に届くと、彼女はわずかに顔をしかめながらも、最後まで口を離さなかった。
溢れ出たものを丁寧に舌で拭い、静かに顔を上げる。
時間を置き、再び体を重ねた。
彼女の秘部はすでに熱く濡れ、指を滑らせると粘り気のある感触が絡みつく。
「生で……外に出してください」
掠れた声でそう頼み、私を受け入れた。
奥まで沈めると、彼女の内壁が熱く締め付けてくる。
痛々しいほどに表情を歪めながらも、腰は自ら動いていた。
騎乗の体勢になると、片手で顔を隠し、もう片方の手でベッドを掴み、必死に上下する。
水音が部屋に響き、彼女の細い腰が震える。
「……もう、限界です」
低い声で告げると、彼女はすぐに体を離し、私のものを手で包み込んだ。
熱いものが彼女の白い腹の上に飛び散る。
彼女は静かにそれを拭い、約束を改めて確認した。
「これで、終わりです。誰にも話しません」
部屋を出て、車で彼女を送った。
車内で彼女は一度も私の顔を見なかった。
家の前で降りると、小さく礼をして去っていった。
あれから二年が経つ。
元妻とは時折、事務的な連絡を交わす程度だ。
社長一家のことは、もう深くは考えない。
ただ、あの夜の彼女の震えと、必死に耐える表情だけが、時折鮮明に蘇る。
私は今、再び一人の時間を過ごしている。
工場の長い勤務の合間に、静かにあの夜を思い出すことがある。
憎い相手への報復として始めた行為が、結果として私自身の奥底に眠っていた欲望を、はっきりと目覚めさせてしまった。
それだけは、否定できない事実だった。

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